春ニカ2013「水彩のマンジュリカ」完成までのいろいろ #harunica
3月10日夕刻。先日行われたミクの日ライブからちょうど24時間後のこと。ふらふらとネットの海をさまよっていたらニコニコ動画で「春のエレクトロニカ祭り」なる催しの告知がされているじゃありませんか。なんて面白そうな企画!『これは参加しねぇわけにはいきやせんぜ!』とべらんめぇい口調でKitotanのリーダーに電話にて一報を入れると「別にいいお(^ω^)」みたいな返答だったのでやる事に。
リーダーはあまりNoとは言えない人です。人当たりはいいのですが、一般社会におけるカースト制度ではシュードラ、俗世間的には「社畜」などとも呼ばれています。これがエレクトロニカイベント「春ニカ祭2013」への作品投稿プロジェクトの発端でした。
まずは今まで作りためたストックの中から数曲をピックアップ。そして企画の概要を伝えるべくはリーダーに電話をしました。リーダーはいわゆる「電話に気づかない」タイプの人間でもあるので、普段からあまり電話に出ません。おそらくお仕事で忙しいんでしょうね。いますよねそういう人。別に私が嫌われてるわけではありませんよ?私感ですけどこの手の人間は出世しませんのであしからず・・・
リーダーは、私たちの共通の友人でもあるTさん(別称ハゲ)が切り盛りする狸小路7丁目の居酒屋「ヒルニネル」ですでに べろんべろんに出来上がっていて “ほろよい気分”で何故かちょっと上機嫌でした。春ニカの概要をリーダーに伝えると、何故かノリノリで「新曲?やるやるwwエレクトロニカ?はい喜んでぇwww」なんて言うじゃありませんか。これはあなたアレですよ。「自分は今回作曲しないし、言い出しっぺ君だし、だから君がんばりたまえだし」的なお心持ちだったのではないでしょうか。
まぁそんな悪乗りな勢いも手伝ってか、新曲を作る 羽目 運びと相成りました。それが作曲地獄の入り口だったとは知らずに・・なんせみんなお仕事で忙しかったの・・・
とりあえず本作品は佐々木のワンマンセルでまるっと1曲作り切ってみました。作詞作曲ミックスマスタリング佐々木。リーダーは絵書いて動画作ってソシャゲやってました。今度会ったらあのiPhone5を叩き割ろうと思います。
実は今回はちょっと特殊な方法で制作にとりかかりまして、「先に絵を描いてそれにインスパイアされる形で作曲をスタートする」という技法です。いわゆる「ブラック★ロックシューター」のメソッドですね。小鳥遊ちゃんprpr。リーダーがhukeさんでRyoさんが佐々木で。がでがで面白かったですね(違。とにもかくにもメンバー内での「無謀はハードル上げ」が功を奏してか、スタートダッシュのテンションはなかなか良いものだったと思います。
そしてそんな電話の後にリーダーが居酒屋から送ってきた原案がコチラになります。
魔界である、というのは置いておいて、氏曰くファンタジーとのこと。心の中で「仕事早いな(困惑」とツイートしたのは内緒ですがさてどうすっぺか。つうことでギターを弾いてたら大体曲のアウトラインは出来ました。最初はシンセバキバキにしよーと思ったんですけど、ギター弾いてると、múm(ムーム)とかFour Tet(フォー・テット)とかっぽい「なんかもっさりとした」雰囲気にしようかなと思いなおし、結果その方向性で進めることに。ちなみにイントロのストリングスは「Nanotron」というメロトロンのフリーVSTiがあったのでそれを使用しました。
リズム隊の音は「車のドア開ける音」とか「引き出しを閉める音」とかをBATTERY3で加工して作りましたとさ。コレはハーバート(Matthew Herbert)とかアモン・トビン(Amon Tobin)とかへのリスペクトです。あとBメロくらいから入ってくる音は水滴の音。たまたま曲に合った音程の水滴の音のサンプルがあったのフレーズに採用。あとオルゴールの音が入ってるのはツイッターのフォロワーさんに「なんかオルゴール音色のライブラリでお勧めなんてありません?」というご質問を頂いたのでノリで使ってみました。
ざっくりラフまで作るのはそこまで時間かからなかったんですが、なにせ私もリーダーも仕事が忙しすぎました。年度末ということもあったのでしょう。徹夜徹夜徹夜徹夜のお仕事漬けの日々が続き、ホルマリンの中の「人の形をした何か」のような状態に私達は、なかなか曲作りに取り掛かれずにいました。
「朝方までSkypeで会話しながら仕事をすると捗る」などの意味不明な発見をしたり、リーダーなんか会社勤めなので「6:00に退勤して9:00の出勤に15分遅れて上司に怒られる」などといったカースト制度を強いられていました。
もうこんな業界はもげればいいと思います。ていうかもげろ。
私達の不満は募るばかり。互いの心は荒み、不毛な嘲笑と罵り合いが続き、円環の理のベルトコンベアーに乗せられたような生活で二人の仲は次第に最悪になりそうでした。そして訪れたリーダー唯一の約束された安息日、日曜日。明後日は日曜日です。あの神様ですら「もうさすがにメンドクセぇわ」つって休んだ日曜日。そしてその貴重な日曜日を目の前に控えた金曜日の夜!
今夜二人で作業しないで何時やるの?今でしょ!?さてここはひとつ日頃の業務から解き放たれて体を休めたいところですが、もろもろの遅れを取り返すチャンスでもあります。しかも金曜日なのに仕事も割と早めに終わった!
がんばれリーダー!
がんばれKITOTAN!!!
貴重な週末をフル活用して挽回するんだっ!!!!
貴重な週末に、温泉に行ったりカレー食べに行ったりメイド喫茶に行ったりしてたら、お、やべえこんな時間じゃん。ってなったので歌メロを歌詞を書き上げました(・ω<)チャキ
さて、締切まであと1週間というところで問題発生。
「やべえ、なんかこの曲、超好きになったった・・・」
自分の好きなジャンルがゆえに思い入れが強くなってしまったんでしょう。春ニカという企画物だからこそ存在する締め切りという壁。私はリーダーに「ねえ、納得いくまで作りこみたいから出品を辞退してもいい?」と漏らし、しまいにはこんなツイートまで。
フフw 何度見ても「フフw」ってなります。相当やられていますね。社会人は生きていくだけで精一杯なのです・・・というのは置いておいて、余りにも宗教的かつ哲学的なリリックになってしまった曲を、繰り返し繰り返し聴いているうちに何かに「当てられて」しまったのではないかと思われます。反復運動と経年変化は偉大ですね。しかしそれはリーダーもまた然りで、Skype越しに生気を失ったため息と共にこんな事を言い出します。
リーダー:
佐々木がそう言うのなら仕方ないよね・・・
やっぱ辞退させてもらおうか・・・ていうか人間てなんだろうね・・・
佐々木疲れたろう・・・僕も疲れたんだ・・・
なんだかとても眠いんだ・・・
完全に当てられています。ルーベンスの絵の前で天使たちにチョークスリーパーホールドされちゃってます。マジで“ポア”する5秒前です。そんなリーダーの“リーダーらしからぬ姿”(逆に人間臭くて好感持てますが)に私は奮起することになりまして、「春ニカまでにはやっぱりやるべき!!」という事になり作業続行です。
あとで聞いた話ですが、この時のリーダーの弱気は、私を奮い立たせるための演技だったそうです。
天使どいて!そいつ殺せない!!
みたいな感じで焦る私とマイペースなリーダー。
そりゃこんな一言もツイートしちゃいますよ・・・
と、まぁそのような感じで詰めの作業に入って行き、グリッチを入れたり入れなかったりとか、リスナーさんスモールスピーカーで聴き取れるかどうかの調整をやっていたのであります。締め切り前日まで微調整を繰り返し、初の自分たちによるイラスト書き起こしなど、多くのチャレンジがあった1ヶ月。ついに出来た1曲は「水彩のマンジュリカ」と名づけました。リーダーが勝手に自身の淡い恋模様を勝手に押し込んできましたが、言葉の響きがそれを上回ったので良しとしましょう。動画・エンコーディング・テキストライティング・各種SNSへの仕込み。最後の最後まで一生懸命に制作させて頂きました。産み落とした、と表現した方が近いかもしれません。「春ニカ」という企画物であるからこそ譲れない部分、こだわりたい箇所、限りなく高めたい妥協点。あらゆる場面で幾多もの葛藤とせめぎ合いがありました。一聴綺麗で心地よい曲ではありますが、その裏腹でサウンドメイキングはどうしてなかなかごった煮の様を呈しているんです。
佐々木:私も疲れた・・・なんだかとても眠いんだ・・・
リーダー:おい佐々木!Karent主催のカフェミュージックの企画持ってきたぞ!
佐々木:・・・
<Fin>
エレクトロニカってなんだよ?
最後の最後に私佐々木の、今回の企画で思ったエレクトロニカ考察。エレクトロニカってなんだ?っていう話です。ポストロックでもいいよね?的な。ぶっちゃけ言うと90’s後期のWARPやスリルジョッキーなんかの作品を大量に収集しておりました佐々木なのですが、どうしても「エレクトロニカ」っていうにはグリッチ成分少なすぎね?って事で悩みだします。しかしハーバートなんかも「エレクトロニカ」にくくられる事もありましたし、大好きなフアナ・モリーナあたりは「フォークトロニカ」だの「アルゼンチン音響派」だのいろいろと呼称があったりして、これがエレクトロニカっていう回答が無いんですよ。地味にビート成分薄めのボーズオブカナダとかもありますし。
あまりにも包括的な「エレクトロニカ」。つうことでなんかグリッチでも入れてみっか、ってなったのが締切二日前。んでグリッチを入れて悶々とする俺。気に入らねえ。リーダーに相談。「グリッチどう思う?」と聞く俺に「ああ、気持ちよかったYO」と言うリーダー。やべえ、この音消したいって言ったらどうすんだべ、と思いつつも「気に入らねえから消させてくれ」と言う俺。ていうか締切前日に作った最終MIXは思い切りグリッチを抜いちゃった私。
結果大正解です。基本的に自分は足してちょっとでも気に入らんかったら音抜くタイプです。理想は多すぎもせず少なすぎもせずです。ちゅうことで最後のアウトロにミクさんのコーラス足して作業終了と相成りました。いかように労働しながら音楽を作るというのはベリーハードな作業であります。出来は満足だからOK。お腹いっぱい。
というわけでまた来年、春の嵐の季節、春ニカ2014で逢いましょう。
最後に、主催のCrfさんをはじめとした「春ニカ2013」の運営の方々、ご清聴いただいた#harunicaの参加者の皆様、聴いてくれたリスナーの皆様、広告を入れていただいた坊主of蒲田さんに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました!!