SP1200の音質・質感を再現する方法
ちゃっす、佐々木です。90年代のHIPHOP好きならなんとなく聞いたことが有りそうな「SP1200」という名前。コレはE-MU社が当時発売していたサンプラーなんですが、特徴としては「サンプリングしたサウンドがザラザラになる」事でしょうか。
何故ザラザラになるかというと、デジタルの折り返しノイズ(エイリアス)が膨大に発生するからです。AKAIなどのサンプラーはその折り返しノイズの処理が非常に優れている為、SP1200の様にザラザラバキバキといったノイズが発生しません。
そういった事もあり、「SP1200のサウンド」というのはサンプラーの世界において孤高の存在です。
SP1200を利用したプロデューサーは数知れず、マーリー・マールだとかピート・ロックなど、90年代に活躍したHIPHOPプロデューサーに高い支持を得ている名器です。
ちなみにですが、なんでそんなにサウンドがジャリジャリになるかというと、SP1200はサンプリングタイムがなんと「モノラル 10秒」
しかし色々と録音したい、と思うのがあたりまえ。んで、当時のB-BOYが何をしたかというと「レコードを45回転ピッチ+8で録音し、サンプラーでピッチを下げる」という技法でした。そうすると沢山のサンプルが容量を逼迫せずにつかえたのです。
ついでにこの「ピッチを変更する」という作業で「エイリアスノイズが膨大に発生する」という現象が起きました。そのノイズまみれのサウンドが非常に味わい深く、SP1200 は名器となったのです。
E-MU SP1200は高くて買えません
中古市場では15万~20万はするSP-1200。ここで貧乏な人なら考えるハズ。「どうにかしてSP1200の質感をお安く再現できないだろうか?」と。
もちろん私も考えましたよ。別に貧乏じゃないけど、SP1200買うほどもうB-BOYじゃないし。
つうことで、まあ似たようなサウンドがする機材をまずはご紹介しますね。
ENSONIQ MIRAGE
エンソニックのミラージュも、サンプリング音はザラザラでエイリアスノイズのりまくりです。有名どころではデリック・メイのStrings of lifeの音もMirageでサンプリングされた音です。SP1200よりはピーキーな雰囲気。bit数は8bitと、12bitであるSP1200よりもロービット。
中古市場での価格はだいたい3万円台ってところでお手軽に手に入ると思います。鍵盤付きモデル、ラックモデル、海外流通モデルと日本流通モデルで仕様が異なっている様です。
ちなみにコイツ、テクノ好きであれば絶対にご存じのはずのデリック・メイの「strings of life」で使用されているサンプラーです。
ZOOM ST224
完全にダークホース。ギターエフェクターなどでおなじみのZOOMですが、なんと過去サンプラーを発売しておりまして。んで、こいつは18bitと割とハイビットなのですが、何故かサンプリングするとSP1200やMIRAGEのようなジャリジャリとしたエイリアスノイズを発しまくりとの情報をゲット。
そして驚きのお値段。中古市場でなんと3000円~9000円程度で入手が可能となっております!!なな、な、なんと!!安すぎじゃん!!
つうことで中古で3000円程度だったのでゲット。
さっそくサンプリングしてみたところジャリジャリ。ちなみに33回転のレコードを45回転で録音して、ピッチを6半音下げてみた。普通にサンプリングすると、エイリアスノイズは発生しないのでちょっと面白く無い。
しかしだ。ぶっちゃけエイリアスノイズが大量に乗っており、原音ソースは見る影も無いが、SP1200の音かっていうとやっぱりあの「ズドン!」と来る太さは足りない。個人的には悪く無いと思うけどね。
ちょっと待て。
Native Instruments Battery4の「S1200」モードでいいんじゃね?
恐らくかなりのDTMerが使ってると思われる、ネイティブインストゥルメンツの「Battery」。Battery4からは恐らくSP1200をシュミレートしたであろう「S1200」というモード、またMPC60をシュミレートしたであろう「MP60」モードがあるのだ。
コイツを設定して、サンプルのピッチを下げると・・・。おいおいおい、エイリアスノイズがバッサバッサにのってまるでSP1200みたいなサウンドに!
ぶっちゃけ勢いでZoomを買った物の、別にBattery4でもいいじゃん、って雰囲気に。
まあしかしだ。やっぱそこはソフトウェア音源という事もあり、なんだか実機の暑苦しさみたいなのは物足りない。やっぱり綺麗な音だ。まあしかしソフトウェアでここまで出来れば問題は無いだろう。
ロービットサンプラーなら再現できるのか
サンプラーのビット数が低ければ、SP1200の音質が再現できるのかというと「そんなことはない」です。Akai S950も所有しているのですが、Akaiのサンプラーは元々楽器用という事もあり、音程を変えても音質が変化しないです。これは、楽器の持続音などをサンプリングして、音階をつけてキーボードで演奏できるように、というサンプラー本来の利用に向いているからです。
よってS950でレコードを45回転で録音し、ぴっちを下げてもエイリアスノイズが発生しません。よって、ロービット機であればSP1200的なサウンドが出るかどうかというと、出ません。
SP1200に似た機材として、Akai MPC60が上げられますが、MPC60のサンプリング部はS950と同様の為、やはりSPのサウンドはしません。
ちなみに似たSP1200的サウンドが出る機種としては他に「CASIO RZ-1」もあります。こいつもエイリアスノイズのりまくりのジャリジャリ。
SP1200の音質再現の結論
私、不肖佐々木の実験によって「SP1200的なエイリアスノイズバキバキサウンド」は思っていたよりも簡単に再現は可能だという事が発覚した。
ちなみにSP1200の音質をお手軽且つ高音質にゲットしたいのであれば、私は迷わず「Battery4」をお勧めする。まあ出音の素性が良いし、最近はNativeInstruments製のソフトウェアも非常にお安くなっている。Battery4はサンプルも沢山入っているし、Kompleteなんて非常にお得なパックもあり素晴らしい。
Batteryを買わず(買えず)、数千円でSP1200的サウンドを手に入れたい方はZoom ST-224をゲットするのも良いかもしれない。チープなハード機には男のロマンが詰まっている。
しかし結論を申し上げるとだ。完全なるSP1200のサウンドが必要な人は実機を買うしかない。やはり本物は本物であり、名器として君臨する理由は十二分にあるからだ。ま、俺は買えないんだけどね!!!